生産性の難しさ
- 山田 修司
- 2017年10月20日
- 読了時間: 3分
更新日:2017年10月22日
会社で勤めていると、多くの場面で「生産性」という言葉をよく耳にすると思います。
では、生産性というのはどういうものだろうかと言葉にしてみると、多くの人は「時間あたりの成果」であるというふうに考えるのではないかと思います。
つまり、「生産性を高めれば、よりたくさんの成果を生み出すことができる。」という発想に至ると思います。それは、まったくその通りです。
しかし、「組織」という規模で考えてみると、「生産性=一人あたりの時間あたり成果」ではなく、「生産性 = 一人あたりの時間あたり平均成果 x 組織の人数」です。組織全体の成果を算出するならば、組織の人数を積として掛ける必要があります。
例えとして、アメリカと日本の生産性がそれぞれ3%上昇したとしたとしましょう。そうすると、アメリカ(人口約2億人)と日本(人口約1億人)のGDP(国民総生産)の成長率には約2倍の差が出しまいます。日本がアメリカの成長率を超えるには、全体の生産性を6%まで引き上げなければなりません。
これが会社ともなると従業員数は1~5名の会社もあれば、従業員数が10万人以上の会社まで様々な規模の会社が存在します。それぞれの会社で生産性が同率だったならば、実際の会社の売上の伸び率では、100000倍以上の差が開いてしまいます。
しかし、これは裏を返せば、以下のようなことも言えます。
・従業員数が少ない会社は、全体の生産性が低下したとしても売上はさほど低下しない。
・従業員数が多い会社は、全体の生産性が低下することで売上はより大きく低下する。
つまり、従業員数が多い会社ほど、全体の生産性をうまくコントロールする必要性も高くなるということになります。大規模な企業では、経営不信に陥ったときのダメージは予想以上に計り知れないものとなるケースが多いです。
一方で、起業して間もないスタートアップ企業などの小規模事業者、あるいはチームの場合、全体の生産性を高めることを考えるよりも先に、まずは自分達のビジネスを安定道に乗せる手腕が問われます。多少の生産性を気にしたところで、それを改善できたときに得られるリターンが考えている以上に少ないからです。
そして、中規模の会社では、生産性を高めることを目的とした社内の改善がうまくいかないことがよくあると思います。その中には、当初の予想よりも改善の成果が出なかった理由の一つとして、「組織の規模に対して、参加者の人数があまりにも少なすぎた。」というケースもよくあるのではないかと思います。
たしかに、何かを改善するとき、最初は限定された関係者だけを集めて小さくスモールスタートすることが適しているケースは多いと思います。しかし、組織の全体規模が大きくなってきたときには、組織の規模と比例してなるべく多くの人達を巻き込めなければ、組織全体としては思ったほどの成果が出なかったという結果に終わることがあります。
まとめとなりますが、組織全体の規模が大きい場合には、様々な人達を集めて大きく動いたほうが大きな成果となることがあるということについて、我々はもっとよく考えてみる価値があると思います。
もちろん、それを愚直に実現できる素養のある人というのは世の中にあまり多くはありません。途中で逃げ出す「自称敏腕マネージャー」のような人達も世の中にはたくさん存在します。よって、自分達の組織にとって適切なサイズを探りながら、組織全体の成長速度に緩急をつけることも重要になるでしょう。
適切な組織の規模を見極め、組織の規模に適した生産性改善アプローチを実現できることは、長期的には組織にとってより大きな成長に結び付くのではないかと思います。

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